うさみのつれづれ

つれづれ〜

ラプラスの悪魔

「この世は物理法則なんだ」

 

「というと?」

 

「ああやって月が動いてるのも、僕らがこうして立ってるのもそう」

 

「へー」

 

「身近な自然現象を解き明かしていく学問を物理学っていうのさ」

 

「なるほどねぇ… ん?手紙だ」

 

"嘘をつくのはお見通し ラプラスの悪魔"

 

「誰?このラプラスの悪魔さんって」

 

「僕らの行動は、ラプラスの悪魔が全て予言してるんだよ」

 

「誰がそんな事言ってたの?」

 

「物理学の偉い人だよ」

 

「その悪魔さんは何でもお見通しって事?」

 

「そういう事」

 

「じゃあ今こうして話してるのも?」

 

「全部予言通りってわけさ」

 

「うぇー、気持ちわるー」

 

「まぁこの発言も見通されてるんだけどね」

 

「嘘です、やっぱ気持ち悪くないです」

 

「それも予言通りだよ」

 

「じゃあまた嘘をついたら?」

 

「これもまた予言されてるんじゃないかな」

 

「悪魔さんも忙しいんだね」

 

「楽じゃない仕事だからな」

 

「仕事なの?それ」

 

「さあ」

 

「このやり取りを延々に繰り返したら、流石に予言できないんじゃない?」

 

「いやいや、全部お見通しさ」

 

「凄いんだね、悪魔さんって」

 

「楽じゃないからな」

 

「じゃあさ、嘘をつくかどうか、サイコロで決めたらどうかな」

 

「ん?」

 

「1,2,3が出たら嘘をついて、4,5,6が出たら嘘をつかないの」

 

「なるほど、そしたら予言できないってわけか」

 

「しかもね、サイコロはここにある箱の…ってうわっ」

 

「ビックリした、中に猫が隠れてたなんて」

 

「ええと、気を取り直して、サイコロはこの箱の中で振るの」

 

「というと?」

 

「僕は出た目が何か分からない」

 

「うん」

 

「僕でさえ嘘をつくかどうか分からないのに、予言通りなんて言えないでしょ?」

 

「なるほど、考えたな」

 

「例えば出た目が1だとするじゃん」

 

「うん」

 

「悪魔さんは嘘をつくと予言していたとするじゃん」

 

「うんうん」

 

「でもそこで嘘をつかないんだよ」

 

「ほう」

 

「そしたら悪魔さんにバレないで悪口を言える!」

 

「はー、なるほど」

 

「どうだ、すごいだろ?」

 

「ん?でも、それじゃ最初に言った嘘をつくルールが嘘なんじゃない?」

 

「そんなルール破っていいんだよ」

 

「でもさっきの」

 

「あっ」

 

(終わり)